第6話 お滝さん花
あじさいは長崎市の花です。
鳴滝塾跡はもちろん、中島川沿いにも、そして、長崎のあちらこちらにあじさいの花が咲き誇ります。
私「やまだむつみ」の持ち歌に「花唄」という歌がありまして、花の中に潜むひたむきな愛、花を見る心にもその愛は届く、と歌うのですけど。
お滝さんは、シーボルトが長崎を離れたあと、あじさいの花をどんな思いで眺めていたんでしょうか。桜の花を待つように、あじさいの花が咲く頃を待っていらしたんでしょうか。
この長崎の町で、あじさいの花をみつめて、お滝さんの思い、お滝さんの愛を感じたいと思います。
5月の満月の日。
シーボルト宅跡を訪ねました。
国道から鳴滝へと通じる道は短大時代毎日通った道です。私が通った長崎県立女子短期大学は4年生大学昇格に伴い長崎市から長与へ移転し、名前はシーボルト大学となりました。
とてもとても狭い短大への車道は、離合する場所を知った運転でないと泣きを見るような道でしたが、現在は随分広くなっていました。といっても私は、昔も今も徒歩です。歩くのが昔から大好きです。
18、19、20歳という未来を思う時期を過ごした学校は、今は鳴滝高校という夜間のある学校になっています。
久しぶりの道のりに懐かしさが溢れました。遠くから、こんな文字が見えました。
共生+共感=絆 最初は、何? 漢文?
漢文が何故、横書き?といった印象でしたが、生徒会の今年のテーマだそうです。
面白い表現だなぁと思いつつ。シーボルト宅跡を目指します。共生の方向に進み、右に曲がり、坂を3分程登ると新緑の鳴滝塾跡が見えてきました。
静かで美しい。
今日、来てよかったという思いが湧いてきました。
これってシーボルトの紋章?
門柱の向こうにレンガの資料館が見えます。大きな木も多く、植物を愛し研究した方の思い、細やかな愛情に触れるような居心地のよい場所です。シーボルト像の下に、あじさいのまだきゅっと青い蕾を見つけました。そして浮かんだのは17歳のお滝さん。これから女性として花開くお滝さん。
一枚写真を撮りました。
シーボルトとお滝さん。そしてふと、さっきの表現が浮かびました。
離れていても、共生していた。
離れていても、共感していた。
今日、改めて教えてもらった思いです。オランダイチゴを探したお稲さんが、二人の絆の形。思いが人を作り上げる。離れていても一人の女性を育てた。
お互いに、それぞれに、どれだけの忍耐を体感したんでしょうか。
満月を見ながら私の思いは膨らんでいます。
今夜の光はいつもより強い気がします。